ある国民の愛国的熱狂は、彼らの享受する自国の福祉や政府の公平さに、
必ずしも直接呼応するものではない。 
ナショナリストがもつプライドは、他のさまざまなプライドと同様、自尊心の代用になりうる。 
それゆえ、政府の政策や歴史的事件が、国民一人ひとりの自尊心の形成と維持を困難にするとき、 
国民全体のナショナリズムが一層熱烈かつ過激になるという逆説が生じる。 
ファシズムや共産主義の体制下にある民衆が盲目的愛国心を示すのは、 
彼らが個々の人間として自尊心を得ることができないからである。 

エリック・ホッファー「魂の錬金術」 
「情熱的な精神状態」より